3.大いなる花獣

アルゴノーツ:vs大いなる花獣

1


 翌日、朝食を胃袋に詰め込んだオルヴェたちはアリシアの提案で出発前に冒険者ギルドの会議室へ集まっていた。  ……マギニアの冒険者ギルドの建物には会議室がいくつか備え付けられており、冒険者ならいつでも利用可能なのだ。 主に作戦会議などに使われるようで、常に満室気味なのだが今日みたいな朝早くだと空室が目立つ。 「それじゃあ昨日見つけた遺跡……『|東土ノ霊堂《とうどのれいどう》』についてだけど」 「東土ノ霊堂?」  聞き慣れない単語を繰り返すメンバーに向かってアリシアはウィンクすると、『古代文字大全』と表紙に書かれた何冊もの分厚い本──恐らくは昨日図書館で借りたそれらを机の上にドカンと置いた。 「階段の近くに文字があったの、遺跡の名前だと思って調べておいたわ」 「わぁぁっ! アリシアちゃんすごいよ!」 「フン、あれくらいの古代文字なら一晩あれば解読できるわ! ……んん」 「アリシア寝てないのか?」 「こ、これくらい大丈夫よ! それで東土ノ霊堂についてだけど、この地図を見てくれる?」  オルヴェにあくびを指摘され少し赤くなったアリシアが次に取り出したのは綺麗な羊皮紙に写された東土ノ霊堂の地図だった。  南の細い通路を通って中央広間から四方八方に向かってクモの足のように広がる入り組んだ道は見ているだけでも目が痛くなりそうだったが、ある一部分から道を記す線が途切れていた。 「……〝北側のエリア〟がまるっと未踏破でしょ」 「昨日はライカちゃんを見つけてすぐ帰ってしまいましたからね」  つまりこの先に、とエドが地図の空白をつつくとアリシアの唇がにっと弧を描く。 「ええそうよ。恐らくこの未踏破区域に〝なにか〟が隠されていると私は予想する」 「お宝か先への道か……どちらにせよ調べる価値は十分あるな」  自信ありげに言い放つアリシアと珍しく前向きな事を口にしたヴィーザルの言葉に一行は大いに湧き立つ!  謎の遺跡の先にあるのは新たな迷宮への道か、あるいはマギニアの探し求める秘宝か。  冒険者としてこれ以上の喜びと名誉はない。 「よし! 東土ノ霊堂を一番最初に踏破するのはオレたちアルゴノーツに決まりだ‼」  オルヴェは胸に燃え盛る熱意のまま雄叫びを上げて勢いよく立ち上がると腕をテーブルの中心に突き出し、仲間たちも少年の手に自身の手を重ね合わせる。  昔から五人揃って何かをやる時の儀式のようなもので、顔を寄せ互いの瞳を確認し合った若者たちは探索が上手くいくように腕を高く掲げた。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

更新履歴

・2026/02/01:第1版