東雲の別れ

アモロ観光局:真ルートエンディング

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……アモロ観光局と真祖との戦いが終わって数時間後、海都の港では海都の腕章を着けた衛兵と冒険者たちが少し古風な船に食料や水を積み込んでいた。 「本当に深王さまもお姫さまも旅立つんだね…」 「ええ。 フローディア様とも相談した結果、正式に決定しました」 積み込み作業をしていた白兎は木箱を置くと窓にもたれ掛かって、慌ただしく港を走り回るアモロ観光局の仲間たちや衛兵を眺める。 あちこちから指示の声が飛ばされ木箱が終わりなく運ばれてくる光景は昼間の市場とよく似ていた。 アーモロードで最後に見る景色としては日常過ぎるがそれも良いのかもしれない。 「大団円になったのはいいけどさー、あの二人、幸せになったのは良いけど全部私たちに任せてどっか行くなんてちょっと無責任すぎない? オランピアの事も魔の事も後はよろしくってさー」 「あら、尻込みしなくても良いと思いますよ!白兎さまも深王さまに選ばれた戦士の一人なんですからね」 「……そういう意味じゃないんだけどなー」 トコに窘められながらもほっぺを膨らませた白兎が視線を向ける先には、淡く照らされた桟橋で仲睦まじく語らう深王とグートルーネ姫の姿があった。 ……冒険者が手に入れた白亜の供物によって失われた記憶を取り戻しフカビトの支配を逃れた深王とグートルーネ。人であり人ならざる彼らは人として生きる為にアーモロードを離れる決断を下したのだ。 「最初に姫さまから旅立ちの計画を聞かされた際は驚きましたわ、クジュラさまもですよ!」 「え!?あの人も驚くことあるの!?」 「ふふ、珍しいですよね。でも誰よりも先にフローディアさまが『その件に関しては全責任を負うから、幸せになって』と仰ったんです。 姫さまと会えなくなって誰よりも悲しいのはフローディアさまなのに……まさに真の愛と友情ですわ!」 「急に興奮しないで!?」 それからも白兎たちは窓枠に肘をついて出港準備の進み具合や相も変らず話し続ける兄妹を眺めていたが、姫君とフローディアの友情を讃え続けていたトコが不意に静かになった。 「……それに今のお二人にはもう魔と渡り合う力がありませんもの。姫さまはそれを踏まえてアーモロードから出ていく事にしたのでしょう」 「そっか……そうだよね」 「……よし!白兎さまも旅立ちのお手伝いをしましょうね!」 「ふふ、了解!」 しんみりした空気を払拭するようにトコたちは勢いよく立ち上がると調理場へと向かった。 料理が得意ならば、グートルーネ姫が好きだった物を作って送り出すのが従者としての責務である。それに姫さまはおしゃべりも好きだから色んな話をして楽しませなくては。 「ネイピア商会謹製の海難避けのアミュレットの取り付けが終わりましたよ……いらない気もしますけどねぇ」 「まぁこの船自体深都のオーバーテクノロジーが使われてるってオランピアが言ってたし、あたしたちは保険みたいなものなんじゃないの?」 それはまた豪勢な保険ですねぇ、とヨグは少しからかうような口調で呟いて金属製の大きな船を見上げる。 ……ザイフリートとグートルーネの旅立ちの話を聞かされたアモロ観光局も二人のためになにか出来ないかと考え、相談した結果出港の見送りや手伝いをする事にしたのだ。 海賊であり航海士であるテオドラは海域や航路の話をしたり、占星術師であるヨグは海難避けのアミュレットを船体に設置したり、トコたちのように何かしら個人で出来ることをしていた。 (流石に八十の『プレゼント』はやんわり断られたが) 勿論、アモロもザイフリート様のためにと貯蓄を叩いてアーモロード土産を買ってきたり選りすぐりの品を港に積み上げながらせわしなく走り回っていた。

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更新履歴

・2024/12/03:CSSを更新 ・2024/04/06:第1版