1
一目散に駆け込んだ碧照ノ樹海、二階の最深部。
そこは美しい緑の葉や樹木が赤黒く染められ、人間と獣が混ざったような異様な臭気に包まれていた。
「う……臭っ」
「なんてこと……」
辺りに散乱する衛兵の装備や木片には既にアリが集まり始め、場所によっては大きくへし折れた大木や炭化した枝や毛が散らばっている。
……その奥では腕に添え木をした傷だらけの衛兵がうずくまっていた。
「だっ大丈夫か⁉」
「君たちは……冒険者か!」
うずくまっていた男は近寄ってきたオルヴェたちの足音が聞こえたようだが、なぜか助けを求めるのではなく下り階段を指差した。
彼の二の腕に巻かれた部隊章には星が五つ刺繍され、最上位の衛兵──『衛兵長』である印を見てヴィーザルは目を丸くした。
……こういう管理職まで引っ張り出されるとは、マギニアは相当追い詰められているのかもしれない。
「オレたちオリバーとマルコを探しに来たんです‼ 二人を知りませんか⁉」
オルヴェの質問に心当たりがあるらしく、衛兵長は苦悶の表情をわずかに和らげた。
「オリバーとマルコなら赤毛の熊を追ってこの下に向かった……」
あの二人が助けに来なければ自分はここにいなかっただろうな、と衛兵長は力なく呟く。
「もし行ってくれるなら早いところ加勢してやってくれ」
「っでもその怪我!」
「私のことは気にするな! ……いくら二人が凄腕でもあの獣はヤバい」
衛兵長は自分を治療しようとする冒険者たちを拒絶し、先へ進むように促す。
「でも……」
それでもなお怪我に集中するオルヴェの腕を掴むとヴィーザルは強い語気で言い放つ。
「オルヴェ、俺らの目的はなんだ」
「……オリバーとマルコを助けに来た、分かってるよヴィーザル」
……言われなくても分かっている、それでも身体が勝手に動いてしまう。
長年染み付いた人助けの倫理か、あるいは自分がかつて経験した死への恐怖か。
そのどちらなのか、今のオルヴェにはまだ分からなかった。
……兜の下から見上げてくる戦う意志を失っていない眼光、すがるように伸ばされた衛兵長の手をオルヴェは握り返すと力強く頷いた。
「分かった。オレたちがオリバーとマルコを助けるよ」
「……行きましょう」
万が一に備え先頭に立ったエドの背に続き、オルヴェたちは真っ暗な階段に足を踏み入れた。
一歩踏み出すと足元からべちゃりとした水音が響く、幸いにもそれが何なのかは闇が覆い隠してくれていたが嗅覚の鋭いヴィーザルは鼻をつまむ。
……死の匂いだ。
「キャアッ‼」
「うわぁぁぁぁっ⁉」
不意に最後尾を歩いていたアリシアの足の裏に何か柔らかいものが触れる!
即座に甲高い悲鳴を上げた彼女を筆頭に、極限の緊張状態にあったオルヴェたちは毛を逆立てて猫みたいに飛び上がると一斉に武器を抜き振り返る!
「……なんだ、冒険者のバックパックかよ」
「まさか体のパーツかなんかだと思ったのかよアリシア〜」
「うっさいオルヴェ! 普通変なの踏んだら誰だって叫ぶでしょ⁉」
茶化されたアリシアは顔を真っ赤にすると足元に落ちていたバックパックに蹴りを入れる。
すると、不意に何かが光を反射しアリシアはその場にしゃがみ込む。
「? どうしたのアリシアちゃん」
「これ……」
「金でも落ちてたのか?」
どうしたんだと話しかけてくる仲間たちに、なぜか顔を青ざめさせたアリシアが不思議な形の金属片を拾い上げてみせた。
「……メガネ?」
それは血と泥にまみれレンズの割れたメガネだった。
歪んでしまった細い銀のフレームと割れてしまった少し分厚い近視用のレンズ。
ただのメガネだが、オルヴェたちは最近これとよく似たものをどこかで見ていた。
「……これって」
「みんなも気づいた? やっぱり──」
「っ急ぐぞ‼」
いても立ってもいられなくて、拳を握りしめたオルヴェは先頭のエドを抜かすとぬめる階段でバランスを無理矢理取りながら一目散に階段の出口へと駆け下りる!
「オリバー‼ マルコ‼」
痛いくらいに差し込む光と緑、刺すような光に目を細めたオルヴェの青い瞳がゆっくり映したのは赤黒い血と土煙にまみれ地面に倒れ伏したオリバーとマルコの姿だった。
「そんな……」
「遅かったか……!」
「二人とも起きて! わたしたち助けに来たよっ‼」
続けて降りてきたイリスが涙声で呼びかけるも倒れた二人はピクリとも動かない。
その様子にエドとアリシアは悔しげに顔を伏せ、ヴィーザルは壁に拳を打ち付ける。
素人目に見てももはや手遅れという事しか分からず、オルヴェはぼやける視界を必死に拭って流れ落ちるぬるい塩水をどうにか止めようとしていた。
(これじゃ、オレはなんのためにベータに選ばれたんだ……‼)
「……マスター、私を彼らの元へ連れて行って下さい。今ならまだ間に合います」
「え、ベータ?」
「急いで。心臓が止まってしまう前に」
いつになく真剣な様子のベータに急かされ、オルヴェは疑問を喉奥に押しやると彼の指示通りにオリバーとマルコの元へ近づく。
土気色で地面に横たわる冒険者たちを蒼く照らしていたベータはすぐに自らの形を剣から箱型に変形させた。
「これから緊急手術を開始します、指示があるまで離れて下さい」
「わっ⁉」
ベータは細い触腕や未知の器具を生み出すと、オリバーとマルコのどす黒い色の痣や白い部分が見える傷跡めがけてそれらを突っ込む!
「うっ!」
「ちょっとベータ! 何してるのよ⁉」
「まさかオレみたいに……⁉」
「ただの応急処置です。ご心配なく、彼らはまだ〝生きています〟ので」
傷口に異物を挿入され、突然の痛みにオリバーが低いうめき声を上げるが、脂汗の流れていた険しい額がすぐに和らぐ。
まるで凄腕の針子のような手さばきでベータが自らを動かし続けているうちに二人の傷はみるみる塞がり、顔色もだんだんと健康な色に戻ってきた。
「っ二人の顔が、脈も……‼」
「呼吸安定、脈拍数正常。以前貧血の傾向が見られます、後はベースキャンプで専門的な処置をして下さい」
「一体あなた中身どうなってるのよ……」
「──ごほっ! ごほ……!」
「‼」
処置を終えベータがオルヴェの手の中で剣に戻った直後、オリバーが咳き込みながら瞼を開け、マルコが痛みに呻きながらもオルヴェたちを見て驚いたように目を見開いた。
「ぐっ……君たちか」
「マ、マルコ! オリバー! 大丈夫なのか⁉」
まるで生き別れの家族と再会した子供のようにすがりつくオルヴェの頭をオリバーは彼のもみくちゃに撫で回してやった。
周囲を探っていたマルコもアリシアから割れたメガネを手渡され感謝を口にする。
……誰が見ても致命傷だった怪我は戦えはしないものの歩けるまでに治癒していた。
「もしかして、お前らが手当してくれたのか?」
「そんなところだ。それで……」
「二人も獣王ベルゼルケルに襲われたの?」
無論ベータの治療の事は伏せてヴィーザルはお茶を濁し、イリスの問いかけに二人の表情は一気に険しくなる。
「そうだ。衛兵隊を襲撃していたところを僕たちも見つけて追いかけたんだ」
「手傷は負わせたが、この階に降りたらすぐに姿を隠しやがって……この有り様だ」
そう言って二人の顔が苦々しげに歪む。
脳裏に浮かぶ敗走の記憶だけではなく、身体中に刻まれた痛みに魘されるように。
……戦闘しながら自分のテリトリーに誘い込み、弱った獲物に奇襲を仕かける狡猾さを持つ獣王。
不意に遠くから聞こえた地鳴りのような咆哮にオルヴェたちは思わず身構える。
「……大丈夫、奴のナワバリはここから離れているみたいだ」
「よかった……」
「それよりもアルゴノーツのみんな、君たちに頼みがあるんだ」
「獣王に手傷を負わせたことを話しただろ? ……このまま俺たちが追い詰めて仕留められればいいが、今の状況ならお前たちでもいけるはずだ」
オリバーとマルコは互いに支え合いながら立ち上がると、オルヴェたちを真剣な眼差しで見据えた。
「だからオルヴェ、俺たちの代わりに獣王ベルゼルケルを倒してくれるか?」
「ま──……いや、」
……自分はこれまでの人生で何回〝任せてくれ〟と口にしただろう。人助け、自分がやりたい、あるいは誰かを安心させる為に。
今回のオルヴェの〝任せてくれ〟はそのどれでもなかった。
口から出たのはでまかせのその時気分の言葉じゃなくて、不思議と頭が冴えて胸の中で闘志が燃え盛る〝信頼〟の感情だった。
「任せてくれ。必ずオレたちアルゴノーツが獣王ベルゼルケルを倒す」
「……すまねぇ。俺たちの尻拭いをさせるような形になっちまって」
オルヴェのまっすぐな言葉にオリバーとマルコは無言で頷くと親指を上に立てて明るく笑う。
「この戦いが終わったら旨いステーキでもご馳走してやるぜ」
「本当か⁉ 約束だからなっ!」
「オルヴェくんは相変わらず切り替え早いですね」
「肉はいつ食べても旨いだろ!」
「はは。オリバーと同じようなことを言うねぇ」
マルコの指摘にオルヴェがまた膨らんで、アリシアたちも思わずクスリと笑いをこぼし緊張気味の空気が和らいだ。
二階の衛兵と一緒に救助を待っている、と告げて階段を登ったオリバーとマルコを見送り、オルヴェたちは再度気を引き締める。
鳥の声や日の差し込む緑色の監獄はもはや相手のテリトリー、オルヴェたちにできるのは痕跡を辿り樹海の奥へと進む事だけだった。
ヴィーザルとイリスの調査の元、獣王ベルゼルケルを探してオルヴェたちは赤い毛のついた茂みやまだぬるい血液を発見し歩きまわっていた。
できるだけ散開しないように一箇所に集まって調査をしていたオルヴェは仲間たちから隠れて、ベータに小声で話しかけた。
「……その、ベータ。さっきはオリバーとマルコを助けてくれてありがとう」
「どうしたんですかマスター」
ベータが訝しげに言葉の真意を問うとオルヴェはあれだ、それだ、と口ごもりながら少し赤くなった頬を掻く。
「オレたちだけじゃ多分オリバーとマルコを助けられなかった、でもお前のお陰で救えたんだ。だからその……ありがとな、ベータ」
──まだ幼い顔を綻ばせ青い瞳を細めた少年をベータは無言でスキャンする。
安定した心拍数や青い剣をしっかりと捉えた瞳、表情筋の動きやセトロニンの量も、全て〝感謝や好意〟を示すものだった。
「……喜ぶのは早いですよマスター、まずはミッションの達成を」
「そうだな、おう!」
感謝には応えず、先への道を促してやると単純なオルヴェはニカッと歯を見せて笑い、腕まくりをしながら獣王の痕跡を探し出した。
……こういう時どんな反応を返せばいいのか、破損したベータのデータベースではその答えを導き出せなかった。
「……あれ?」
追いかけていた獣王ベルゼルケルの足跡が急に途切れ、イリスは首を傾げる。
足跡が消えた先は背の高い草の茂みであり、大きな動物が通ったような痕跡はない。
……なのに足跡は行き止まりで途切れているのだ。
「どうしたの?」
「足跡が無くなっちゃって──ん」
うーんと唸りながら顔を上げたイリスはアリシアの背後の木に目が止まる。
オリバーとマルコが戦った跡なのか、その幹は他と同じように破壊の痕跡が残っており爪痕が樹上にまである。
(……あんなに高いところまで?)
「ね、ねぇイリス? 急にどうしたのよ」
「いや、その……」
突然殺気立ったイリスにアリシアが不安そうに話しかけてくるが全身の悪寒が止まらない。途轍もなく嫌な予感がする。
足跡や痕跡から推理するに獣王の体調は碧照ノ樹海のバオバブよりも小さいはず。上まで届くならそこら辺に葉っぱが一枚二枚落ちているはずなのに。
(なのに、なんで──)
──獣王の足跡が、僅かに〝二重〟になっている?
二重の足跡は行き止まりを少し戻り、自分たちの背後にある例の木へと──!
「みんなっ! これは罠──!」
イリスが叫ぶと同時にオルヴェたちの頭上が一瞬にして暗くなる。
──反射的に見上げた先にいたのは、樹の上から飛び降りてくる赤い毛皮の巨大熊、獣王ベルゼルケルだった。
誰かが耳を塞げと叫んだ声は、狩りの始まりに歓喜する獣王の前ではあまりにも小さすぎた。
2
「────‼‼」
「っ⁉」
大嵐の如き大絶叫に混じってぶつんとオルヴェの耳の奥から何かが千切れるような音がする。
気づいた時には地面を踏みしめていたはずの足が宙に浮き視界がほぼ反転していた!
(な──っ⁉)
──転倒するオルヴェの頭上に獣王ベルゼルケルの巨大な白色の爪が迫る!
「オルヴェ‼」
「ぐえっ⁉」
ヴィーザルの声が聞こえた気がした瞬間、オルヴェはマフラーを掴まれて勢いよく引っ張られる!
地面に投げ飛ばされたオルヴェは咳き込みながらも自分たちの前で地を抉る剛腕と鋭爪に固唾を飲んだ。
もしもヴィーザルが来てくれなかったら……!
「っありがとヴィーザル!」
「礼は後だ! 来るぞ!」
耳鳴りの止まぬ身体に再度力を込めて、オルヴェたちは獣王ベルゼルケルの剛腕を紙一重で回避する。
先ほどの咆哮《バインドボイス》の効果がまだ残っているのかオルヴェの耳奥からは未だに甲高いノイズ音が響いて集中力を削ぐ。
(みんなは──!)
当たれば致命傷の一撃を身を捻りながら回避しつつ、オルヴェの青い瞳が仲間たちを探す。
アリシアやヴィーザルは奇襲時に距離を取っていたお陰で無事だったが、オルヴェと同じようにモロに絶叫を受けたエドも耳鳴りが止まず自らの身を守るので精一杯、イリスに至っては転倒時に頭をぶつけたのか地面にぐったりと倒れて動かない。
そんな彼らを守るように獣王ベルゼルケルとの間に何度も砕かれても檻のような氷柱が生え、投刃が獣の硬い額に突き刺さる。
──しかし、足止めはできてもまともなダメージは与えられない。
「っベータ!」
「お呼びですかマスター」
咄嗟に口から出たのは自分をゾンビ化させた慇懃無礼な剣の名前だった。
どういう原理か知らないがくぐもっていない声が即座に頭の中に響く。
「前みたいに〝蒼いオレ〟出せないか⁉」
「蒼いオレ……『残影』ですね」
蒼いオレ……東土ノ霊堂での戦いでオルヴェから生み出された謎のもう一人のオルヴェ。
不服だが自分よりも強い自分さえいればこの状況を好転させられるのではないか。
だがベータはその発言に宝玉を何度か輝かせて否定する。
『計測の結果、現時点での残影召喚率5%以下と判断します』
「っ! じゃあなんでもいい! なんでもするからお前の力でこの状況を打開できないか⁉」
考えてる暇なんてない。
ベータと話している間にもアリシアたちのスタミナは無慈悲に削られている、彼らを助ける為なら自分はどうなったって構うものか!
無鉄砲でまだまだ子供な少年の未熟な覚悟と責任を秘めた瞳にベータはため息をつく。
……だが、次にベータが放った言葉はいつもの皮肉ではなかった。
「エネルギーをいくつか消費し『鼓舞』を使用します」
「鼓舞⁉ わっ!」
「ご心配なく。今回はゾンビになったりしませんので」
ベータの剣身が僅かに縮み、溢れ出した蒼白い光がオルヴェの身体に薄くまとわりつく!
握りしめた柄は熱を放ち、オルヴェの体の傷や聞こえる音がどういう訳か元に戻っていく。
何よりも全身にやる気のような闘争心が燃え上がっているのだ。
「これは……」
「現在『鼓舞』を発動中。マスターの攻撃に合わせて相手の生命力を私たちへ還元します、戦って下さい」
「っ! 分かった! ヴィーザル、アリシア!」
オルヴェが仲間たちに呼びかけると二つの双眸が光るオルヴェとベータを一瞥する。
少し短くなった剣で獣王ベルゼルケルを指し示すと二人は首を縦に振りそれぞれの得物を構えた!
「正面からは無理よ! ちょっと待って!」
アリシアは一旦戦場から距離を取ると一呼吸置いて星術器のリミッターを吹き飛ばしその場で狙いを定める。
手加減なしの全力で戦っていたせいで星術器はオーバーヒートしそうだし、体内のエーテル濃度もそろそろ害が出るレベルだ。
──だからこの一撃に賭ける!
「聞こえたなオルヴェ⁉」
「おう!」
ヘマするなよ、ヴィーザルはそれだけ告げるとオルヴェの目の前から一瞬にして掻き消える!
隙を作るのはアリシア、撹乱はヴィーザルに任せオルヴェは改めてベータを握り直す!
「ふんっ!」
「───ッ!」
すばしっこく動き回っていた餌はどこへ行った、と首と目玉を動かす獣王の顔にヴィーザルの投刃が命中する!
上かと見上げれば今度は横っ腹に、下を爪で薙ぎ払えば次は耳元に。
自身の致命傷にはならないものの続く痛みの雨に獣王は苛立ちを募らせていた。
突然動きが変わった冒険者たちに獣王は警戒するように唸り声を上げていたが、やがて乱杭歯の生えた口を歪ませる。
……視線の先にいるのはエドとイリスだ!
「イリスっ! くっ!」
「うおっ⁉」
イリスのピンチに動揺したあまりヴィーザルは木から足を滑らせそのまま落下する!
──上から降ってきたヴィーザルをオルヴェは自分の身体で受け止めるが獣王ベルゼルケルの歩みは止まらない!
「エドく……うーちゃ……っ!」
「っ伏せて!」
咄嗟にエドはイリスの前に出ると盾を構える。
だが奇襲のダメージが抜けず盾を構えるのではなく、杖のようにすがってぎりぎり立っている状態に近い。
やっと目を覚ましたイリスも獣王に応戦すべく立ち上がろうとするがその力はあまりにも弱々しい。
──間に合わない。
誰もが、仲間めがけて獣王ベルゼルケルが振り下ろした爪を絶望的な表情で眺めていた。
「──折角、ドライブ並みの威力が出せるまで準備したのに!」
ただ一人、最適なタイミングを求めて星術器が壊れる限界まで四人と一匹の戦場を観察していたアリシアは獣王に向かって不敵な笑みを浮かべる。
「目眩ましには豪華すぎるかもねっ!──『アストロサイン』‼」
避けろ、と叫びアリシアは星術を獣王ベルゼルケルの背中から足元めがけて解き放った!
地面にエーテルが着弾した瞬間、戦場は一瞬のうちに熱風と土混じりの黒煙に包まれる!
エドとイリスは盾で、オルヴェとヴィーザルは警告を聞いて咄嗟に回避したが、背後から不意打ちを食らった獣王ベルゼルケルは視界が一気に黒く染まり足元の熱と衝撃に思わずよろめいた!
──奴らは一体どこに消えた?
「オラァッ‼」
五秒ほどの僅かな静寂。
直後に黒煙を貫いて銀色の投刃が無防備に晒された獣王の脛に突き刺さり、黒煙をぶち抜いて飛び出したオルヴェが渾身の追撃を見舞う!
丸太の如く分厚い皮膚と骨を殴れば当然だが、攻撃の反動がオルヴェの腕から嫌な音を響かせるが、これだけやれば相手もただでは済まないはずだ。
「─────ッッ‼」
「! ぐうぅっ……」
いくら人間よりも頑丈で痛みに強い魔物とはいえ、体重を支える脛の骨にヒビが入ったのだから獣王ベルゼルケルの反応は当然だ。
「変換機構、起動!」
ベータの無機質な──だがどこか気合の入った声が響く!
直後に獣王に食い込んだ刃が血を、筋肉を。体表組織を吸い始め、飛び散った血が光の粒子へと変換される!
粒子は流れ星のように仲間たちの傷口や負傷箇所に侵入し瞬く間に再生した皮膚を塞ぐ。
……ベータの言っていた『鼓舞』の力だった。
「ベータ……うわっ⁉」
食い込んだ剣を引き抜いたオルヴェの頭上に振り下ろされたのは体勢を立て直した獣王の剛腕だった。
いくら黒煙で視界が悪いとしても自分の近くにいる外敵を魔物が見逃すはずなどない。
「オルヴェくん! ぐっ!」
鼓舞で回復したエドは即座にオルヴェと獣王の剛腕の間に割って入った!
激しい連続斬撃にエドの身体は後ろに押されスマイトシールドの鋼板が波打ち──ついに左側の盾が割れる。
「っ大丈夫か⁉」
「何とか!」
口では気にするなと告げるエドだが残った盾も先ほどの連撃でほぼスクラップ同然だ。
獣王ベルゼルケルももはやなりふり構ってられないのか防御を捨てた猛攻は新米冒険者であるアルゴノーツに攻め時を見失わせるのには十分だった。
星術器の壊れたアリシア、だんだんと減る物資、迫る黒煙の目隠しのタイムリミットにヴィーザルは舌打ちする。
「オルヴェくん!」
「イリス!」
前線で獣王を抑え込むオルヴェとエドの元へイリスが駆け寄る。
握られていた槍はいつの間にか腰に差した大剣を組み込んだ殺傷力の高い両刃槍になっており、イリスは息を切らせながらベータを指差した。
「ベータさん! さっきみたいに、今でも〝剣以外〟になれる⁉」
「勿論。その様子だとなにか思いついたのですか、イリス」
「うん!」
イリスは勢いよく頷くと、オルヴェとエドそしてベータに手短に作戦を告げる。
──少女の語る作戦、作戦ともいえないような思いつきにオルヴェたちは賭けた。
オルヴェが駆け出すと同時にヴィーザルにも話をつけていたのか、肺の二酸化炭素を吐き切って彼も獣王の頭上から陽動を開始する!
今のオルヴェたちの仕事は獣王ベルゼルケルの気を引く事だ。
足元をすばしっこいネズミのように駆け、盾を鳴らしできるだけ黒煙の中に視点を固定する。
……黒煙が少し薄い外周部分では観測手役のアリシアの元、イリスの槍先が動く獣王の頭蓋を狙っていた。
イリスが提案した作戦は単純なもので、『ブレインレンド』による脳への一撃──〝即死〟だった。
体力も気力も枯渇寸前、相手は凶暴化しているが手負い、塞がれた視界。そして先ほどまで気絶しており消耗の少ないイリス。
それらの条件を踏まえてイリスたちは〝全力の一撃必殺による離脱〟に賭けた。
生きている以上、頭さえ潰せばこの勝負は終わるのだ。
「──今よ!」
「当たっ……てぇぇぇっ‼」
アリシアの声と誘導用のエーテルマーカーが放たれ、イリスは全身をバネのように捻り地面に踏み込むと前に転びながら獣王ベルゼルケルめがけて槍を投擲する!
だが、顔めがけて投げつけられた槍を獣王ベルゼルケルは一瞥すらせず、虫を払うかのように一薙ぎで弾き飛ばした──はずだった。
「足元に──ご注意をっ‼」
煙の中に隠れていたエドが獣王の膝めがけ、残った鋼鉄の盾ごと体当たりをぶちかます!
歪んだ盾一枚では倒せなくても、限界まで足に力を入れ全体重をかけた『シールドスマイト』は獣王の片足に電流のような痺れと瞬間的な硬直をもたらす!
「マスター! 引いて下さい!」
「っ避けさせるかァッ‼」
ベータが刃を蒼い鞭状に変形させ獣王に吹き飛ばされた槍を巻き取り、オルヴェは全身の体重を乗せて思いっきり鞭を引っ張った!
イリスの渾身の一投、それを弾いた獣王の腕力、その二つの運動量が合わさり投石機並の勢いになった飛翔物は獣王が防御するよりも速く、槍は緑の刃を光らせながら巨大な赤いたてがみに叩きつけられた!
「───‼‼」
予想外の方向から戻ってきた槍が獣王ベルゼルケルの頭蓋骨を叩き割る!
手傷を負った身には強烈すぎる一撃に獣王は泡と血混じりの吐瀉物を撒き散らしながら仰け反って倒れ込む。
衝撃と土煙にオルヴェたちはよろめきつつも土煙の先を睨みつける。
……やがて土煙が晴れて見えてきたのは凹んだ後頭部から赤と桃の体液を垂れ流しながら動かなくなった獣王ベルゼルケルの最期だった。
「……倒した、のか」
ハアハアと肩で息をしながら地面に倒れた獣王ベルゼルケルを睨むオルヴェ。
ヴィーザルはその言葉を確かめるべく動かなくなった獣王へ近づいて検分し、やがて頭を縦に振った。
「間違いなく死んでる……俺たちがこの怪物を倒したんだ」
ヴィーザルの無愛想な顔は驚きと高揚、そして達成感に満ち足りた微笑を浮かべていた。
3
「やっっ……たぁぁ〜〜〜〜‼」
「あー……酷い目にあった」
「でも僕たちみんな生きてますよ! えへへっ!」
碧照ノ樹海に若き冒険者たちの勝利の雄叫びが響く。
ある者は仲間に飛びつき、ある者は解放感から地面にへたり込み、ある者は武器を掲げ自分たちの勝利を称え合った。
数週間前まで、アルゴノーツの面々は魔物と戦うどころか樹海に足を踏み入れた事すらなかった。
そんな自分たちが今、どんな熟練冒険者も倒せなかった魔物から勝利をもぎ取ったのだ!
「オリバーとマルコにも早くこのことを知らせようぜ!」
「オルヴェくん待って! まだはぎ取り終わってないよぅ!」
今すぐにでもこの吉報を伝えたくて仕方がない、まるで犬みたいに階段前でぐるぐる走り回るオルヴェの姿にイリスたちは大声で笑い出した。
「マスター、階段の上に大きな生命反応があります」
……そんな和気藹々《わきあいあい》とした空気の中、不意にベータの宝玉が点滅する。
「ん? オリバーたちじゃないのか?」
「いいえ」
オルヴェの質問にベータは即答する。
いつものように冷静で淡々と、だが警戒を隠そうともしないベータの態度にアリシアたちは眉間にシワを寄せた。
「じゃあ……」
……ベータが探知した〝それ〟は一体何なのか。
先ほどまで勝利に湧いていたオルヴェたちの表情は不安と警戒の色に染まり、聞こえてくる鳥の声や葉擦れの音にも身を強張らせていた。
「この距離では詳細なスキャンは不可能、対象に近づいて下さい」
近づけという事は。
オルヴェは視線を動かして上り階段を凝視する。
……暗く先の見えない階段は独特の臭気と不気味なほどの静けさが漂って、それがまるで自分たちを飲み込もうとする魔物の口のように思えた。
「……行きましょう、警戒は怠らないように」
隊列の一番前に来たエドにオルヴェは頷くと未だに赤い水音のする階段を登り始めた。
行きと違い焦燥感や手遅れになるかもしれないという危機感はないものの、アルゴノーツ内に流れる空気は暗く重たい。
「ねぇ」
ゆっくりと点滅しながら生命反応を調査しているベータにアリシアが率直な疑問を投げかける。
「大きな反応ってオリバーたちが一塊になってるからって線はないの?」
アリシアは違うかもしれないけどと前置きしながら、大気中のエーテルを探知する時もたまに複数のエーテル素が集まっているせいで星術器が誤認する事があるのだと語る。
怒ったようにも見えるアリシアの真顔に、うっすらと冷や汗が流れているのにオルヴェは気がついた。
「まだあの二人と衛兵長がベースキャンプに帰ってないってことか?」
「ほら、アリアドネの糸を持ってない可能性もあるでしょ? それにあんな大怪我してたら動くに動けない気もするし……」
「この生命反応は単体、ここまでの大きさだと人間の可能性はほぼありません」
「ちょっと待って下さい。それ〝以外〟の生命反応はないんですか?」
「それ以外の生命反応は探知不能です、が──」
「それ以外……人間以外?」
ひゅっと喉から息を漏らしたオルヴェはベータや仲間たちの声を無視し、一目散に階段を駆け上がる!
──二階で待っているのは三人、ベータが探知した生命反応は……一つだけだ。
巨大な獣を倒し、今まさに急勾配の階段を全速力で駆け抜けている身体よりも、この先は危険だと早鐘を打つ心臓の方が痛くて仕方がなかった。
「止まって下さいマスター! 例の生命反応とほぼ同一の生命反応パターンがデータベースに存在します!」
「例の⁉」
ベータが何を言っているか、オルヴェにはもはや耳を傾けるだけの冷静さは失われていた。
ただ光の射す方へ、みんなが待つ場所へ走る。じゃないと……!
強迫的な不安と衝動に突き動かされ最後の段を飛び越えたオルヴェが最初に感じたのはむせ返るほどの鉄の匂いだった。
次に聞こえたのが水風船を思いっきり地面に叩きつけたような破裂音、それから追いついた仲間たちの息を呑む音。
清水を湛えていた水辺は赤黒く濁っており、その近くにいたのは人間ではなかった。
──赤と黒の毛皮と背後からも分かるほど大きく白い爪、納屋くらいはある巨大な身体。
「あ……」
オルヴェの口内はカラカラに乾燥して、〝あれ〟を見るなと全身の皮膚が粟立つ。
そんな事などお構いなしに『食事中の獣』は首を鳴らしながらゆっくりと振り向く。
「ひっ」と背後のイリスの口から漏れた悲鳴がやけに遠くに聞こえた気がした。
「……オリバー、マルコ?」
「この生命反応パターンは……『獣王ベルゼルケル』のものです」
──そこにいたのは顔を血と肉片で彩った、傷一つ無い『二匹目』の獣王ベルゼルケル。
その足元の血溜まりの上で雑に転がされているのは死体みたいに真っ白になって動かなくなった『三つの身体』だった。
獣王は吠える。
森を揺らす咆哮はまるで新たにやって来た『おかわり』に対する歓喜のようにも、新米冒険者たちの恐怖と絶望の表情に対する嘲笑のようにも聞こえた。
4
「マスターたちの現在の勝率は5%以下、逃走を推奨します」
「! それって……」
「あの人たちを、見捨てろっていうの⁉」
オルヴェの肩越しに身を乗り出し、アリシアは鋭い声で少年の握る剣を睨みつけた。
……予想はしていたが、あまりにも受け入れ難い答えにアリシアの喉がゴクリとつばを飲み込む。
ベータに言われなくたってアリシアも分かっている、この状況で自分たち全員を無事に生還させるには〝三人を見捨てて逃走する〟選択肢しかないのだ。
オルヴェたちと獣王ベルゼルケルとの距離は約三十メートル。
逃走する──恐らく、向かって来る獣王ベルゼルケルの攻撃を回避しながら、取り出したアリアドネの糸が発動するまでの時間──としてもギリギリな距離であり、自分たちは先ほどの戦いで物資の殆どを使い切っているのである。
(……動いたら、来る)
ボロボロの盾一枚でも〝仲間たちの〟逃走経路を確保するには十分だが、エドが盾を構えようと体を動かすだけでも獣王は牽制するように低い唸り声を上げる。
……こうやって立ち止まっている間にも獣王は一歩ずつこちらへ近づいてくるし、大怪我を負った三人の命の期限はドクドクと地面に流れ落ちているのに何もできない。
無力感に苛まれるエドの苦々しい顔を黙って見つめていたオルヴェが不意に場違いなくらい明るい声でベータに問いかけてきた。
「一ついいか? もしもだけど……今オレたちが逃げたらあの三人はどうなる」
「99.9……いえ、確実に死亡します」
「……そっか」
はっきりとオルヴェにも分かるようにベータは〝不可能である〟と答えてやるとオルヴェは少年らしくない真剣な表情になる。
何時間も考え抜いたような沈黙の後、オルヴェは肩をすくめて笑った。
「なぁベータ、オレとお前で〝助けが来るまで〟どれくらい時間稼げるかな?」
「なっ⁉」
「……無謀です、何を考えているんですか」
──強がりはやめろ。
心拍数はさっきからずっと高い数値を記録しているし、死を目前にしたストレスによる震えは止まらないし、アドレナリンの値も上昇しているのにオルヴェは頑なに首を縦に振らない。
「無茶だ! オルヴェくんも一緒に逃げよう? 一人で戦うなんて自殺行為だって!」
「分かってるよ……ごめん! でも!」
何を考えているのか、さっきまで自分がやろうとしていた事を理解したエドは強い語気でオルヴェの手を掴む。
だが少し睨むように細まった青色の瞳や僅かに力の入った唇は少年の中で燃えている感情の渦に呼応して、泣いているようにゆらゆら震えている。
……自分にこの少年は止められない。
長く付き合っていたからこそ、彼が何を思い誰に謝っているのか嫌というほど理解できる。
「絶対、助けが来るまで死んじゃダメですから、盾をやる人はそれが絶対ですからね」
「当たり前だって!」
強い意思を秘めた瞳と見つめ合う事数秒、エドは爪が白くなるまで掴んでいた手を静かに離しオルヴェに言葉を残し仲間たちの方へと戻る。
二人の対話を、自分たちの気持ちを代弁してくれたエドを静観していたアリシアたちは剣を手に取ったオルヴェと視線を交わす。
無言の問いかけに答えるように少年は仲間たちに小さく頭を下げると、赤いマントを翻しベータの柄を折れんばかりに握りしめて一歩前に出る。
──恐怖と不安と罪悪感が八割、そしてオルヴェの内側に渦巻く残りの二割の感情が何なのか理解したベータは思わず思考をそのまま口にしていた。
「なぜ、マスターは使命でもないのに死への恐怖にわざわざ立ち向かうのですか?」
「……」
「彼らをここで見捨てても貴方には何一つデメリットがない。なのに生存の機会を自ら捨て、私と契約した時の目的すらもふいにするような行動を取り、助かる見込みのない人間を助ける……なぜ?」
「……それがお前の知りたかったことか」
オルヴェは言い返す訳でもなく、寂しそうに笑ってみせると震える喉で深呼吸をして、目と鼻の先に迫ろうとする獣王ベルゼルケルに切っ先を向けた。
背後で叫ぶ仲間たちに向かって「任せた!」とだけ残し、オルヴェは全身に気合を漲らせる!
「死ぬのが怖くても、使命じゃなくても、どうにもならないとしても──困っている人を見捨てられるわけないからだっ!」
この少年を突き動かしているのは仲間を巻き込みたくないという自分勝手な責任感と夢物語のような正義感、それから世間知らずの蛮勇と呼ぶしかないほどの善性だ。
……AIであるベータはオルヴェのそんな甘くて青臭い信念がひどく愚かで子供で馬鹿らしくて非論理的で──。
(……マスター、その感情は私にはない)
──どうしようもなく羨ましく思えた。
「私は貴方を少し見くびっていたようですね──『第一の鎖』解除!」
5
一瞬何が起きたのか分からなかった。
ベータの声の直後にオルヴェの全身に小さな衝撃が走って身体が急に軽くなった気がしたのだ。
そのまま地面に踏み込んだ……その一歩だけでオルヴェの身体は獣王ベルゼルケルの〝背後〟に回り込んでいた。
「マスターの脳のリミッターを全て解除しました! 三分以内にケリをつけて下さい!」
「わ、分かった!」
指示通りオルヴェは急ブレーキをかけると振り向く獣王ベルゼルケルの腕めがけて刃を振るう!
蒼雷を纏うオルヴェの振るった刃を獣王ベルゼルケルは咄嗟に太い爪で受け止めるが、その一撃は先ほど〝狩った〟冒険者たちとは比べ物にならないほど重く、強烈な衝撃が全身の骨を震わせる。
「マスター! 下です!」
「ああ!」
カウンターのつもりか下からゆっくりと突き上げられるもう一つの鋭爪をオルヴェは半身で回避し、逆に大きな手のひらに蹴りを入れて距離を取る!
振り回される豪腕の乱舞を強化された動体視力で見切り、幾度となく間髪入れずに繰り返される斬撃に獣王は少しずつ階段の方へと後退する。
……先ほどまで目の前の『餌』はこんな異様な気配を放っていなかった、なのに光った瞬間から突然強くなった。
──これは、なんなんだ?
湧き上がる苛立ちと未知の存在というストレスに獣王は毛を逆立てながら攻撃を続ける。
当たれば致命傷の猛攻を軽やかに回避し、小さくも無視できない痛みとしつこい攻撃を続ける、何とも小賢しい──!
「一分経過」
「っ!」
耳元で風切り音が聞こえる。
避け損ねて斬られた髪や流れる冷や汗を拭わずオルヴェは死の舞踏を続けていた。
階段近くにいたアリシアたちの姿が見えない事に胸を撫で下ろすが、すぐに息を吸って目の前の怪物との死闘を再開する。
(まだか…!)
動き回る獣王ベルゼルケルを牽制しつつ、オルヴェは自分の背後を何度も確認していた。
たかが一分待ったところで助けが来るわけないのは重々承知しているが同時にまだ一分しか経っていない事実に歯噛みする。
……挑発と攻撃を繰り返し何とか獣王ベルゼルケルがオアシスに近づかないよう誘導しているが怪我人たちの方はいつまで持つか分からない。
(急所を避けてる……!)
それに、いくら身体能力の制限がなくなったとはいえ新米冒険者如きが五体満足の樹海の支配者相手に太刀打ちできるほど樹海は甘くない。
脳のリミッターが外れ解放された火事場の馬鹿力は確かに獣王の体力を削っているが、どの一撃も急所には命中せず、赤い毛や蒼い光の粒子が舞い散るばかり。
大したダメージを与えられない現状、迫り来るタイムリミット。
真綿で首を絞めるように、戦況は次第に獣王ベルゼルケルの方へと傾き始めていた。
「一分三十秒経過、残り時間半分です」
「分かってるっ!」
動きが雑になってきた事を指摘され焦りが更に加速して、掠った剛腕の勢いで体勢を崩して攻め時を失う。
早く何とかしなければ、どうにかしてこの状況を打開しないと。
額から流れる汗も拭わず戦い続けていると不意に獣王ベルゼルケルと目が合う──オルヴェが何を庇っているのか分かったと言わんばかりにその眼が弧を描いた。
「! まずいっ!」
獣王ベルゼルケルが咆哮を上げて走り出すと同時にオルヴェも全速力でオアシスの方へ走る!
走る勢いを生かしたまま、ほとんど飛び込むような姿勢でオルヴェは倒れた負傷者たちの前に立ち塞がる!
……だがオルヴェが見たのは迫りくる巨体や巨大な爪の一撃ではなく、猛スピードで飛んでくる巨木の幹だった。
「あ────」
──ダメだ、避けられない。
迫りくる衝撃に身を強張らせ、やがてオルヴェの世界は土煙と轟音に包まれた。
濛々と立ち込める土煙と頭上を飛び交う鳥の奇声に向かって獣王はフンと鼻を鳴らす。
……投げ飛ばした大木は地面を削り取り、悲鳴すら上げる事を許さず一瞬で相手を叩き潰した。
餌を食べ損ねたのは気に食わないがそれよりも『あの光』がいなくなったのは幸いだ。
これでやっと安心して食事を再開できる、土煙が晴れたら木を退かせばいい……と。
「っげほげほ……あれ⁉ オレ生きてる⁉」
砂埃に咳き込みながらオルヴェは上体を起こした。
どういう訳かいつまで経っても身体がバラバラになりそうな衝撃が襲ってこない。
代わりに見えたのは自分を庇うように前に立つ黒い影──負傷した身体全体を使い必死に盾を構えるオリバーの姿だった。
「オリバー⁉」
「後輩が頑張ってるのに……俺らが暢気に寝てられるかよ!」
素っ頓狂な呼び声にオリバーは脂汗を流しながらも歯を見せて豪快に笑い、すぐに煙の向こうの獣王ベルゼルケルを睨みつける。
次いで飛び出したマルコも倒れかけた相棒にしがみつき共に盾を支える。
──鎮痛剤の効果でギリギリ立てるようになったが貧血気味の身体では、やがて限界を迎えて倒れるのも時間の問題だ。
「でも一体誰が、」
「実際に見た方が早いよ、だろう?」
オリバーと同じように包帯や添え木で手当を施されたマルコが自分たちの背後を指先で示す。
……そこにいたのは、逃がしたはずのイリスとヴィーザルだった。
「イリス⁉ ヴィーザル⁉な、なんで残ったんだよ!」
「たとえベータがあったとして、アレ相手に一人で何とかなるわけないだろ」
腰を抜かしたまま腕で動いて詰め寄ってくるオルヴェの姿に吹き出しつつ、ヴィーザルは手を伸ばして立ち上がらせてやる。
ヴィーザルとイリスの体はどす黒い返り血で染まっており、先ほどまで何をしていたのかを示すように掴んだ手のひらはぬちゃりと生温かな感触を返した。
……彼らが、オリバーたちを治療していたのだ。
「あのまま放っておいたら多分持たないと思ったの、だから人を呼ぶのはアリシアちゃんたちに任せてわたしたちで衛兵長さんたちの手当をしてたの」
「必死過ぎて見えなかったか?」
薄くなった薬品ポーチをその場に投げ捨てて、軽口を叩きながらヴィーザルとイリスが傍に並ぶ。
先ほどの戦いで消耗しているというのに二人は武器を構え静かにオルヴェの指令《オーダー》を待つ。
……一人で戦うと言ったのに、結局助けてもらった。
そんな自分がどうしようもなく情けなくて、それでもありがたくてオルヴェは喉元まで上がっていた謝罪の声を飲み込んで、代わりに震える手で剣を握り直す。
「……二人とも、ありがとう」
恐怖? いや──きっと武者震いだ。
「残り一分です……私を使ってどうするかはマスターの自由ですよ」
ベータの声が胸の中に巣食う暗闇を打ち払う。
……隣に並び立つ仲間たちが自分に向ける顔、大怪我を負っても生き残る為に立ち上がる姿、そして背後には守るべき困っている人間がいる。
彼らがオルヴェに何を願っているのか、埋められない実力の差を埋められる切り札をどう使うのか。
──そんな期待を向けられたら、申し訳なさも弱音も不安も全部吹き飛んでしまうじゃないか!
「そりゃそうだ、なっ!」
身に纏う蒼がより一層濃くなって土煙を叩き割りながら獣王へと突撃する!
風切り音よりも疾《はや》く!
相手に知覚されるよりも疾《はや》く!
……負傷した仲間と少ないリソースとくれば、狙うは一撃必殺あるのみ!
ド新米のオルヴェでもそれしかないと理解できる!
もはや手抜きは不要、と獣王ベルゼルケルは巨大な筋肉塊を振り回し樹海の木々をなぎ倒す!
降り注ぐ暴力と木片の大嵐に冒険者たちは迷わず飛び込む!
「残り、三十秒です」
岩と衝撃に耐えた盾の影から飛び出した槍が足甲を貫き、絶え間なく打ち込まれる投刃と剣の一閃が確実に戦力を削ぐ。
剣が、槍が、盾が、術式が、あらゆる決死の攻撃が獣王ベルゼルケルの心臓を貫かんと放たれる!
「残り十秒」
……獣王ベルゼルケルは空腹と苛立ちの中に一つの疑念を抱いていた。
窮鼠の如く増えて無駄な抵抗を繰り広げる餌たちから漂う殺気が〝薄い〟のだ。
食われまいと暴れる餌たち、どの攻撃も命を奪わんとする物なのにどこか違和感がある。
獣だからこその勘、魔物だからこその頭脳。
蒼く光る剣が項を叩き切らない事か、遠くの獲物が前みたいに炎を放ってこない事か、足元ばかり狙う槍や盾がまるでわざと先へ歩かせているような……。
「今だ! やれッッ‼」
マルコの割れんばかりの叫び声と泉が水柱を立てたのは同時だった。
「──‼‼」
〝凍えるほど冷たくなった〟泉に獣王が片足を踏み入れた瞬間、衝撃を受けた水が一気に凍りつく!
咄嗟に引き抜こうとするも肉の内側にまで超低温の霜が棘だらけの針のように突き刺さりあまりの激痛に悲鳴を上げる。
術師を狙った一撃を鋼の盾が防ぎ、代わりに異型の剣と槍が無事な方の足を襲撃する!
──その間から蒼い光が銀の弾丸のように飛び立つ!
「3、2、1……‼」
「うぉぉぉぉぉっっ‼」
「!」
前を向いた獣王の双眸が最後の一瞬だけ捉えたのは顔の高さまで跳躍した少年と蒼い切っ先だった。
裂帛の気合を纏った一撃が獣王の額に直撃する。
多重の斬撃が超高速で叩き込まれ、まるで一つの光のように収束する。
光と赤の奔流が獣王を、冒険者を、緑の樹海を飲み込み、遅れて地鳴りのような衝撃と轟音が一気に広がった。
ミシミシと肉が音を立てながら獣王の額に亀裂が走り、やがて空気が破裂した炸裂音が響きオルヴェと獣王は反対方向へそれぞれ吹き飛んだ!
6
「ぐあっ‼」
「────‼」
一気に脱力した身体ではまともな受け身すら取れず、オルヴェは地面に叩きつけられ二、三度跳ねると倒れ伏したまますぐに顔を上げる。
全身に漲っていた力の代わりに、あり得ない量の痛みが詰め込まれるがそんなのはどうだっていい!
──仲間は、獣王はどうなった⁉
「……」
「っまだやるのか……⁉」
倒れはしなかったものの獣王ベルゼルケルは大きく仰け反っており、数歩たたらを踏んでからゆっくりと体勢を戻す。
ここまでのありったけを叩き込んでも尚、王の威厳を示すように二足で領土に踏みとどまっているが豪腕はツタのようにだらりと垂らされ、荒い呼吸を繰り返すその額には星型のような傷跡がついている。
……仁王立ちする獣の王を前に冒険者たちは再度武器を構える。
だが、勝利の女神〝たち〟は冒険者たちが背を向けていた広間の入口から飛び込んできた。
「オルヴェ!」
「みんな大丈夫⁉ 怪我はない⁉」
突如として戦場に躍り出たのはアリシアとエド、そして司令部で出会った女冒険者ウィラフだった。
三人とも声だけをオルヴェたちに向けたまま獣王ベルゼルケルを睨む。
……ウィラフが構える赤い剣に映り込んだ獣王ベルゼルケルは思案するように小さく唸り、最後に冒険者たちを一睨みすると額から血を流しながら下の階段へと素早く走り去った。
「数の不利を悟ったか……」
ボロボロの体を動かしていたエネルギーがついに切れ、マルコとオリバーは汚れた地面に膝をつく。
続いてイリスたちもその場に座り込んで大きく肺に溜め込んでいた息を吐いた。
身体中を満たしていたアドレナリンが切れた倦怠感と無視していた連戦の疲労が一気に重くのしかかってきて、オルヴェはもう走れと言われようが立てと言われようがしばらく何もしたくない気持ちでいっぱいだった。
「……なるほど、その手当はあの子たちがしてくれたのね」
「アイツらがいなかったら多分こうやって喋るのも無理だっただろうな、イテテ……!」
ウィラフたちも遅れて来た衛兵隊と共に調子に乗って痛がるオリバーや衛兵長たちを慣れた手つきで手当していた。
アルゴノーツがやった応急手当だが骨の固定や怪我の消毒よりも出血が抑えられたのが大きかったらしく、衛兵たちがやって来ては口々に感謝してくるのでヴィーザルは面倒くさそうにあしらいイリスは恥ずかしそうにその陰に隠れた。
「っみんな──」
オルヴェも鉛のように重くなった体に鞭打って仲間たちの方に駆け寄ろうとした。
どうして逃げなかったのか、みんな無事なのか、聞きたい事、言いたい事が山ほどありすぎてそれらを言葉にするよりも早く体が先に動いていた。
踏み出した足の感触がやけに軽いなと不思議に思った時にはもう遅かった。
──オルヴェの視界は白い霧に包まれ、鼻腔から濃厚な生温い鉄の香りが飛び出し、ベータを握っていた右腕の防具が弾け紫色と赤色になってグニャグニャになった自らの腕、アリシアかイリスらしき甲高い悲鳴、それがオルヴェが倒れる前に見た最後の景色だった。
「オルヴェ⁉」
「こ、この怪我は⁉」
何の前触れもなく重力に任せて倒れたオルヴェにエドたちの勝利の喜びは一瞬で霧散してしまった。
中でも自信満々だった顔が、まるで波が引くみたいに瞬時に真っ青になったアリシアは即座にオルヴェの肩を引っ掴んで揺さぶり起こそうとする。
ベータの上には倒れなかったものの、少年のほどよく焼けて健康的だった皮膚が真紫や赤の混じった見るも無惨な姿に変貌している様に大パニックになるアリシアを引き剥がしエドたちは何かを言おうとするベータを囲んで耳を澄ませた。
「全身の筋肉を極限まで酷使した反動です。死にはしませんが医療機関での治療を推奨します」
「てめぇの言ってた『第一の鎖』とかいうヤツのせいか?」
「はい。マスターの体にはオーバーロード状態の負荷に耐えられる実力がなかったようです」
「っんなもん使うなよ! てめぇはいつもいつも、オルヴェの身体をなんだと思って──!」
「それよりどど、どうしよう……! オルヴェくん! 起きてっ!」
失神しているオルヴェとは対照的に相変わらず冷静なベータの解説にヴィーザルは舌打ちしつつ倒れた親友を観察する。
獣王に襲われていた他の三人のように流血や骨折といった外傷は一番少ないものの、逆に筋肉や血管といった内側がやられているらしい。
オルヴェの全身は今や腐乱死体のような毒々しい色に染まり始め、ベータを握る右腕に至っては触るだけで呻くし指先から肩近くまでまるで蝋のようにガチガチに力が入ったままだ。
「どうしたの……ってこれは⁉」
「ウィラフさん! オルヴェが急に……早く運ばないと……!」
勝鬨の声とは別ベクトルで騒ぎ出したアルゴノーツに気がついたのか、冒険者たちに近づいてきたウィラフは先ほどまで立っていたはずのオルヴェの重症に目を見開く。
その怪我の重症具合もさることながら獣王ベルゼルケルに負わされたとは到底思えない負傷であり、まだ未知の何かが潜んでいるのかと身構えたが一番オルヴェの近くにいたアリシアの涙ながらの説明にその可能性は低そうだった。
「大丈夫。この子は私がベースキャンプに運んであげる、みんなは護衛よろしく!」
「はいっ!」
ウィラフはすぐに首を横に振って冷静さを取り戻しオルヴェの身体を背負うと、護衛をエドたちに任せベースキャンプに向かい出した衛兵団の最後尾に飛び込んだ。
人間、それも二十人以上の大所帯が樹海を歩き回る異常な風景に気圧されたのか、負傷者を運ぶ衛兵団は魔物に襲われる事なくベースキャンプに辿り着いた。
すぐさまベースキャンプのあちこちから医者や薬師が集合し、オルヴェやオリバーたちを担架に乗せてマギニアへと搬送する姿を見ながら、エドは無意識のうちに首にかけた十字架を握りしめていた。
「……後はマギニアの医師や衛兵に任せれば大丈夫よ、みんなお疲れ」
「! ウィラフさん」
「本当⁉ よかったぁ……!」
不意に背後から響いてきた声に振り返れば包帯や消毒液を手にしたウィラフが労うように笑みを浮かべながらそれらを手渡してきた。
そのまま彼女は消毒液のしみる痛みとも違う強張った表情のまま互いを手当し合うイリスたちを黙って見つめていたが、やがて何かを思いついたように声を張り上げた。
「そういえば、君たちはなんでわざわざ私を探したの?」
「え?」
「帰る前にどうしても聞いておきたくて。あの時は聞きそびれたけど、わざわざ私を探したってことはなにか理由があったのかなって」
「理由ですか……」
どうかな、と陽気な声色のまま唇を尖らせて小首を傾げるウィラフの顔は年上の頼れる先輩冒険者ではなく、まるで同い年の少女のような雰囲気を漂わせていた。
……あの時、アリアドネの糸で離脱したアリシアとエドが向かったのは宿屋でもギルドでも司令部でもなかった。
二人が向かったのはミッションを受けた冒険者が多く集まるベースキャンプだった。
駐屯していた衛兵や冒険者たちは二人の負傷とあまりの剣幕に、すぐ医者や巫医を呼ぼうとしたがなんとエドたちはそれらすべてを拒否しウィラフの元へまっすぐ走って助けを求めてきたのだ。
凹んだ鋼のスマイトシールドに、故障して黒煙を上げる星術器。
ギルドが壊滅したかのような全身傷だらけでどこからどう見ても戦う力は残っていない二人が真っ先に頼ったのは司令部で一度対面しただけの冒険者だった。
「獣王ベルゼルケルに対抗できるような冒険者といったら流石に数が限られるでしょ? だから……」
「あの場にいた人たちの中、そして僕たちが知ってる中で一番強い冒険者……ウィラフさんに声をかけたんです」
ウィラフの質問にしばらく冒険者たちは黙っていたがやがてアリシアは自信ありげな表情で指先で癖毛をいじりながら、エドはこちらを伺うように背を丸めながら〝答え〟を口に出した。
「……ま、あの中だと唯一面識があったからってのもあるな」
「多分助けを呼びに行ったのが『わたし』と『うーちゃん』でも、オルヴェくんでも絶対にウィラフさんを呼んだはずだよ」
二人の答えにイリスとヴィーザルも同意するように深く頷くと、目を丸くして固まっているウィラフを黄色と橙の瞳に映したまま硬かった表情をはにかむように和らげて笑ってみせる。
それからすぐ「またうーちゃんって呼びやがって」とため息を吐きながらイリスのおでこにキツイ一撃を食らわせるヴィーザルをアリシアはあっと反応しながら指差して注意する。
ちっちゃくなって涙目になるイリスに眉を下げた困り顔で二人の間に割って入るエド。
もういつもの和気あいあいとした雰囲気を取り戻した冒険者たちの姿をウィラフは静かに眺めていた。
……剣を持って家を出たあの日、一人前の竜殺しになる為に師事した日々、ツテを頼ってタルシスに冒険者として籍を置き、ついに竜を倒したあの時。そして今。
ずっと誰かに言って欲しかった言葉は、ウィラフが積み上げてきた実績とその活躍を見て育った後輩たちによってやっとつぼみを開いたのだ。
「あの……もしかして迷惑でした?」
「へ? いやいや全然! むしろ凄く嬉しいっていうか、君たちは私をそんなふうに思っててくれたんだなって……そうだ! 君たちお肉は好き?」
気を悪くしたのか、と不安げに覗き込んでくるアリシアたちを宥めて、ウィラフは勢いよく立ち上がる。
それから少し頬や耳を紅潮させたウィラフは後輩冒険者たちを既に宴を始めている食事場へ連れて行きつつ、ここにいない少年にも後で見舞いになにか持って行ってやろうと考えながらベースキャンプを駆けるのだった。
あとがき
『ラグナロクの覇者』の第五話だよ!今回は第二迷宮『碧照ノ樹海』ボス戦その1まで。
第二迷宮『碧照ノ樹海』編は最近書いたのもあって、旧バージョンと比べ大きな展開の変更はありませんが、誤字脱字や表記ゆれ・ミスの修正、オルヴェの設定変更に伴うシーンの書き直しを重点的に行いました。
今回の話も旧バージョンでは一話に収めていた所を分割して再構成しています。
今回登場したボスモンスター『獣王ベルゼルケル(Ⅳ)』はⅣが故郷のマイブラザーやTwitterの観測圏内だとネタ扱いされがち……
(例:Ⅳで二回戦うのは別の熊モンスター『血の裂断者』、獣王ベルゼルケル(Ⅳ)はなんと背後から奇襲可能かつNPCにそれをオススメされる、大地マップを徘徊しているカンガルーの方が強い、裏ダンジョンではさらに強いモンスター『赤獅子』がいる)
しかし、世界樹の迷宮Xではこちらに奇襲を仕掛けてくる狡猾さや、熊という存在の強さを考えて新米冒険者であるオルヴェたちでは凶悪!狡猾!邪悪な印象を強くして書きました。
原作では獣王ベルゼルケルにやられてしばらくステーキ屋さんになってしまうオリバーとマルコですが、今回は先輩冒険者らしい強さとプライドを見せつけてもらいました。
このように『ラグナロクの覇者』では原作では戦わなかったNPCの戦う姿がみたいのでちょくちょく戦わせるつもりです。